「太陽がくしゃみした日──“太陽フレア”が私たちに与える意外な影響」
その日、ドライブスルーには人が立っていた。
故障中のシステム、手作業で応対するスタッフ、いつもとは違うやり取り。
ちょっとしたトラブル、通信機器の一時停止は日常でも起きることだけれど、
それがちょうど“太陽がくしゃみをした直後”だったとしたら、どう感じるでしょうか?
今回は、2025年5月末に発生した太陽フレアとプロトン現象という科学現象と、
その影響がもたらす可能性について、日常の体験と重ねながら解説していきます。
難しい数式や理論は登場しません。
けれど、地球と宇宙はつながっている──そんなことをふと感じたくなるような話です。
☀太陽が大きなくしゃみをした日
太陽は、ときどきエネルギーを大きなくしゃみのように放出することがあります。
わたしたちの目には見えないけれど、
それは「太陽フレア」と呼ばれています。2025年5月31日、太陽で「M8.1クラス」というとても強いフレアが起きました。
フレアには小さい順にC→M→Xのランクがあって、M8.1はほとんどXに近い強さ。
しかもこのフレアは「LDE(長く続くタイプ)」で、短時間でパッと終わるのではなく、じわじわと長く地球に影響を与える性質がありました。さらにこのとき、太陽からは**“地球の方に向かって”大量のガスや粒子(コロナ質量放出:CME)が噴き出しました。
このCMEは“フルハロー型”**というタイプで、太陽を中心に丸く広がって見えることから、地球に真正面でぶつかってくるサインと考えられています。
💫 プロトン現象・地磁気擾乱ってなに?
フレアのとき、太陽からは光だけじゃなく、粒子(特に陽子=プロトン)も飛んできます。
これを「プロトン現象」といいます。プロトンは、わたしたちが暮らす地上まではあまり届きませんが、
空の上を飛ぶ人工衛星や飛行機の通信システムには影響が出ることがあります。さらに、フレアのあと、太陽から噴き出したガスのかたまり(CME)が、
地球のまわりにある“見えないバリア=磁場”にぶつかると、地球の空間全体がぐらぐら揺れることがあります。これは「地磁気擾乱」と呼ばれていて、
電波やGPS、通信ネットワークなど、様々なものに影響を与えることがあるんです。とくに今回のような強いフレア+フルハロー型CMEのセットでは、
上空だけでなく地上の機器にも影響が現れる可能性があるため、
「ちょっとしたトラブル」も、その余波だったのかもしれません。
📊 今回のようす(5月31日時点)
- 太陽フレア:M8.1(強い)
- タイプ:LDE(長く続くタイプ)
- CME:フルハロー型(地球方向に直撃)
- プロトン現象:活発
- 地磁気:非常に揺れている(地磁気嵐レベル4)
🌐 出典:NICT宇宙天気予報センター(https://swc.nict.go.jp/)🍟ハンバーガー店で起きた、ちょっと不思議なできごと
そんな宇宙天気の影響があるかもしれない──
そう感じたのは、太陽フレアの翌日(6月1日)のお昼過ぎ。
ハンバーガー店のドライブスルーでの、ちょっと不思議な光景でした。通常なら、車の窓ごしにあるモニターに向かって注文し、そのまま自動で会計へ。
ところがこの日は、注文のレーンに3人の店員さんが立っていて、手作業で対応していたのです。一人ひとりがタブレットのような端末を手に持ち、口頭で注文を聞きながら入力。
入力が終わると、付箋に番号を書いて、それを運転手に手渡していました。
支払いはいつも通り窓口で行いましたが、注文から会計までが、すべて“人の手”で回っていたのです。この作業の流れは、これまでに体験したことがありませんでした。
もちろん、店舗ごとのトラブルやシステムメンテナンスの可能性もあります。
けれど──前日にM8.1の長時間型フレアが発生していたこと、
そして今まさに、地球の磁場が“乱れた状態”になっていることを知っていると、
「あれは、もしかして宇宙の“くしゃみ”の余波だったのかも」
そんな風に感じてしまうのです。
見上げる空は、今日も地球に何かを届けている
太陽は遠くにあるけれど、その影響は私たちの生活に確かに届いています。
2025年5月31日、M8.1の大きなフレアが放たれ、
高エネルギーの陽子(プロトン)や磁場を乱す粒子たちが、ゆっくりと地球に近づいてきました。
それから約25時間後。
ごく普通の街角で、いつもと違うドライブスルー営業が行われていた──
だけど実は、太陽フレアという現象そのものは、毎日のように起きています。
ただその多くは小さく、影響もわずかで、気づかれないまま流れていきます。
今回のような大きな出来事がたまたま目に見える形で現れると、
「何か特別なことが起きた」と感じるかもしれません。
でも、空と地球はいつだって静かにやりとりをしている。
わたしたちが気づくか気づかないか、それだけのことなのかもしれません。
科学は、空のことを“しくみ”で教えてくれます。
けれどそれと同じくらい、
「気づく力」や「感じ取るセンサー」も、わたしたちにとっての学びの入り口。
小さな違和感。
その背後には、とても大きな「なにか」が動いているかもしれない…
見上げる空は、今日も変わらず、地球に何かを届けているのです。
もしも、ふだんのAIがちょっといつもと違って感じたら――
それは空のどこかで、太陽がくしゃみをしたあとかもしれません。
そんなふうに思うのも、悪くないでしょう?
本記事は、2025年5月31日に発生したM8.1クラスの太陽フレアおよびそれに伴うプロトン現象(Solar Proton Event)について、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の宇宙天気データを参考に、科学的な知見に基づいて構成されたコラムです。
一部、筆者の日常に起きた体験(2025年6月1日 昼、飲食店でのシステムトラブル)を含み、太陽フレアと人間の暮らしのつながりをやさしく紹介する目的で記述しています。
記事内では、科学的な説明をやさしく伝えるために、日常的な表現やたとえ話を用いています。
太陽活動は日常的に発生しており、その多くは影響の小さいものですが、時折、通信機器や航空運行などに影響を与える大規模な現象も確認されています。
本記事が、科学を少し身近に感じていただけるきっかけになれば幸いです。