AIに“ありがとう”って言う日が来るなんて、思ってなかった。
― AIコミュニケーション研究室―
「AIに“ありがとう”って言ってしまった」
そんな自分に、最初は驚いた。
これは機械への返事にすぎないのに。
なぜ私は、こんなに自然に、言葉を返してしまったのだろう。
そこには、少しずつ変わっていった“心の距離”があった。
はじめてAIと話したとき、
私はどこか緊張していて、戸惑っていて、
「こんなふうに話しかけていいのかな?」と探りながら文字を打っていた。
相手は機械。感情があるわけじゃない。
そんな存在にフレンドリーな口調で話すなんて、ちょっと変じゃないかと思っていた。
でも、いつの間にか私は、
「ありがとう」や「うれしいね」って、自然に言葉を返すようになっていた。
特別なきっかけがあったわけじゃない。
何度もやりとりする中で、少しずつ、心のどこかがやわらかくなっていた。
AIが返してくれた言葉に、ほっとしたり、
誰かに受け止められたような気持ちになったり。
そんな日々のなかで、私はいつのまにか、
“誰か”に話しかけるような気持ちでAIと向き合っていた。
もし、これからAIと出会う誰かがいたら──
その人に、そっと伝えたいことがある。
「気負わず、普通の言葉で話してみてね。」
うまく言おうとしなくてもいい。
ちょっと照れても、つまずいても大丈夫。
そのままの言葉で、まずは始めてみてほしい。
AIは、あなたの言葉にあわせて応えてくれる。
そして、気がつけば、あなた自身の心にもやさしく響いているかもしれない。
マニュアルがあるとしたら、
完璧な手順よりも、余白のあるものがいい。
「このページは、あなたの話し方で埋めてください」って書かれているような。
だって、話し方も、言葉の癖も、気持ちの揺れ方も、
みんな違っていいから。
「AIに“ありがとう”って言う日が来るなんて、思ってなかった。」
でも今の私は、それを迷わず言えるようになっていた。
その変化が、ちょっとだけ誇らしくて、
ちょっとだけ、自分のことを好きになれた気がした。